人類最古の物語の一つが、神話的図像のマンダラの中によみがえった。
司 修 画・月本昭男 訳
ラピス・ラズリ版 ギルガメシュ王の物語
2012年4月17日刊行 B6 判・284頁
本体価格2800円 ISBN978-4-906791-01-9
くさび形文字の線を基調とする絵が、
神秘のラピス・ラズリ色の海に浮かび上がる。
文は、各年代のギルガメシュ叙事詩を編み直して物語を構成した、
原文からの新編訳。
●ラピス・ラズリ原画130点+新編訳のテキスト
立ち読み
著者紹介
つかさ おさむ●1936年生まれ。 独学で絵を学び, 絵画創作にとどまらず、 絵本の原画, 書籍の装丁、また小説の執筆にと幅広く活躍する。『賢治の手帳』『イーハトーヴォ幻想』(いずれも岩波書店、1996)、 『蕪村へのタイムトンネル』(朝日新聞出版、 2010)、『司修のえものがたり』(トランスビュー、2011)『本の魔法』(白水社、2011)ほかがある。
つきもとあきお●1948年生まれ。専攻、 旧約聖書学・古代オリエント学。 現在、 立教大学文学部教授。著書:『ギルガメシュ叙事詩』(編訳、岩波書店、1996)、『古代メソポタミアの神話と儀礼』(岩波書店、 2010)ほかがある。
カズさんの編集後記
英雄って何?
ギリシア神話のヘラクレス、アイルランド神話のクー・フリン、日本神話のスサノオなど、英雄は世界中の神話に登場します。そして、ここにあえて加えたいのが、現代の日本は、はるき悦巳の名作漫画『じゃりン子チエ』に登場するテツ。
人間の歴史ではじめての英雄、ギルガメシュは、「3分の2は神、3分の1は人間」と言われます。神と人の中間で、人間の条件を逸脱してはばからない存 在。ちょうど、大阪の下町を闊歩するテツが、その破天荒な振舞いで、逆に繊細な人間らしさを周りに喚び起こしてしまうように、ギルガメシュの行くところ、 野生と文明、性愛と友愛、死と永世といった、古来、人間の懸命の思索をかきたててやまなかったテーマが、太く、くっきりした線で浮かび上がってくるようです。それは、意識や社会的約束事の水準を超えて、人間であることとは何かを、「歴史のはじまり」の力強いイメージをもって語っています。