最後のイエス

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真に愛するために

──信仰と理性の全重量をかけて、人間イエスを彫る

  

佐藤 研

最後のイエス  

2012年7月11日刊行  四・六判 228頁

本体価格2600円 ISBN978-4-906791-03-3 

 死をひかえた、イエスの最後の沈黙。あらゆる悲惨と言葉はここに崩れ落ち、栄光のきわみが立ち上がる──
 信とは、怒りとは、親とは、女性とは、イエスにとって何だったのか、その折々の表情と身振りを描いて人間イエスを造型する。

 次第に変貌をとげていくイエスの足跡を、福音書新訳の経験を踏まえ、テキストの正確な読みを基礎として再現。

 

 

目次

〈アリマタヤのヨセフの話〉
 
序 章 イエスの〈負い目〉             
第1章 イエスとパウロ ──新約聖書における「危機」
第2章 イエスにおける人間の尊厳と深淵

第3章 イエスにおける結婚・離婚・姦淫

 

〈マリアの回想〉

 

第4章 詩人イエス ──その言語の特徴について       
第5章 預言者としてのイエス
第6章 聖書学は〈イエス批判〉に向かうか ──「宗教批判の諸相」に寄せて

〈空の墓より〉
 
補 論 宗教史学派のイエス像

著者紹介

さとうみがく●1948年生まれ。専攻、 新約聖書学、現在、 立教大学文学部キリスト教学科教授、 1995年から96年にかけて、新約聖書全5冊(岩波書店)の編集・校閲を担当した。著訳書:『マルコによる福音書 マタイによる福音書』新約聖書Ⅰ、『ルカ文書』新約聖書Ⅱ(1995)、『悲劇と福音──原始キリスト教における悲劇的なるもの』(2001)、『禅キリスト教の誕生』(2007)、『はじまりのキリスト教』(2010)、『旅のパウロ』(2012)など。

 

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カズさんの編集後記

がらん堂

 

聖書学者であり、かつ禅の指導者でもある。ふつうなら水と油で、眉をひそめる向きもあろうかという取り合わせでしょう。しかし、一人の思想家としての著者、佐藤研先生の中で、両者は見事に融合しています。これは大きな出来事ではないでしょうか。

言葉になったことがないある種の経験に、表現を与える。それはおおげさに言えば、思想の資産目録に何かを加えることですが、およそかけ離れたものの衝突からしか、そんな事態は生まれた試しがない。手術台の上のミシンと蝙蝠傘、ディズニーランドで遊ぶイエスと仏陀です。

坐っていると何が見えてきますか、とうかがったことがあります。「がらんどうです。ただ、がら〜んとしている」が答えでした。言葉を使って、そこに「がらん堂」をあらしめること、これが目指す地点ならば、著者の書くものがじょじょに論文の枠を超え始めたとしてもむべなるかなです。

本書には、「最後のイエス」という大切な主題をめぐる、三つの一筆描きのような創作が収められています。いよいよ、さらなる一歩を踏み出されました。