池袋のジュンク堂本店での4月の刊行記念朗読会に続いて、去る7月30日、八重洲ブックセンター様のご好意により、本店8階ギャラリーにて朗読会を催させていただきました。
伊藤比呂美さんは、ポエトリー・リーディングを長く続けている詩人です。聴き手を前にして「声に出す」こと、言い換えれば言葉の生きた現場を、この詩人がいかに大切にしているか、今回ほど痛感したことはありませんでした。
あえいでしまうほどの猛暑の中、お運びくださったみなさまが、次第に思わず知らず引き込まれていかれる場の空気がはっきりとわかりました。そして、人を巻き込んでいくその力は、メッセージつまり言葉の意味というよりも、声と身振り手振りからきていることは明らかでした。
見事なパフォーマンスでしたといいたいのですが、その魅力がどこからくるのか、これを言葉で説明するのは難しいことです。舞台に上がっただけで、滲み出てくる存在感、頭からというより身体から、ぽんぽんとはじけ飛ぶ気取りのみえない声のリズム、昨今の若手芸人など足元にもおよばないものでした。
伊藤さんは、その2日前、盛岡で朗読会をなさり、翌日の29日、被災地の大船渡で2時間の対談とその後の朗読会をこなされ、30日当日の早朝に発つ6時間の行程を経て東京に入り、午後に1本講演会に臨まれた後、朗読会の舞台に上がられたのでした。なんというヴァイタリティ、というより心底好きでなければこんなスケジュールはこなせません。いかにこの詩人が生きた言葉を大切にし、その言葉によってつながる人を愛しているかを再び確認したのでした。
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