謎とされてきた青春の足跡を追い、折口学生成の秘密に迫る
富岡多惠子・安藤礼二
折口信夫の青春
2013年6月21日刊行 四六判・上製 280頁
本体価格2700円 ISBN978-4-906791-16-3 C0095
■ 言語学者・国文学者にして草創期の民俗学者、歌人にして詩人……折口信夫 = 釋迢空とは何者か。ホントーを外さない作家修練の直観と、気鋭の批評家の犀利な論理とで、例外的な個性を育んだ形成期の謎を、多角的に読み解く。
■ 折口信夫の秘密──その背後には創造的にして破壊的な思想のるつぼが、明治期の知られざる一つの精神圏が、そして混沌のエネルギーに満ちた近代日本の「青春」がひそんでいた。
■ 藤無染、本荘幽蘭、鈴木大拙、金沢庄三郎、マックス・ミュラー……柳田國男と出会う以前の、折口の青春を彩った人びと。これらの関係のネットワークから、その時代の革命的な宗教思想・言語思想の糸をたぐり出す。
目次
第一章 藤無染と折口信夫
長谷寺/飛鳥坐神社/『零時日記』/折口とキリスト教/新仏教運動
宗教的一元論/「無我の愛」/寂滅願望と母/神風会/本荘幽蘭
第二章 詩と学の出自
自殺未遂/「乞丐相」と「幼き春」/スサノヲ/無用者と常民
ガートルード・スタインと折口/マックス・ミュラー
西脇順三郎と折口/金沢庄三郎と日鮮同祖論/折口学の内と外
第三章 漂泊のアナーキスト
境としての沖縄と神/柳田と折口/島嶼から見た日本/アカマ・クロマタ
合邦が辻/芸の境/「死者の書 続篇」の周辺/「下手」な詩と歌の
別れ
アナーキストの出所/非定住者のまなざし
著者紹介
富岡多惠子(とみおか・たえこ)
詩人・小説家。1935年、大阪市生まれ。評論に、『近松浄瑠璃私考』『中勘助の恋』(読売文学賞)、『釋迢空ノート』(毎日出版文化賞)、『西鶴の感情』(大佛次郎賞)ほかがある。
安藤礼二(あんどう・れいじ)
文芸批評家。1967年、東京生まれ。多摩美術大学美術学部芸術学科准教授。著書に、『神々の闘争 折口信夫論』『光の曼陀羅 日本文学論』『霊獣──「死者の書」完結編』『祝祭の書物 表現のゼロをめぐって』ほかがある。