このグロテスクな現実と対決するために、同時代に投じる文学の紙つぶて
西永良成
グロテスクな民主主義/文学の力
ユゴー、サルトル、トクヴィル
2013年8月21日刊行 四六判・242頁
本体価格2600円 ISBN978-4-906791-18-7
■ あらゆる規範を失った政治が醜態をさらし、文学の終焉が語られて久しい。
文学はこんにち、生へのアクチュアルな発信を断念し、政治的現実への無惨な絶望を前に、ついに自閉してしまうのだろうか。
著者の半世紀を賭けた文学的試行を集成する、「文学と政治」論集。
■ 大作『レ・ミゼラブル』を皇帝権力に抗っての亡命下に書き継いだユゴー、身をもって政治参加を生きたサルトル、グローバル化という民主主義の負の未来を見事に予言したトクヴィル……時代の権力とそれぞれの仕方で向き合った思想家たちの闘いに耳を澄ます。
ここには断念することを知らない精神と、私たちの同時代への驚くべき予言と、言葉と権力との秘密めいた関係をめぐる明晰な意識とがあった。
目次
はじめに 文学と政治
Ⅰ 『レ・ミゼラブル』の現代性
──ヴィクトール・ユゴーとその時代──
第一章 歴史小説としての『レ・ミゼラブル』
第二章 ユゴーとふたりのナポレオン
第三章 『レ・ミゼラブル』と現代
Ⅱ 文学と政治参加
──ジャン = ポール・サルトルとアルベール・カミュ──
第四章 サルトルと私
第五章 神も理性も信じない人間
第六章 もうひとつの文学行為
第七章 歴史への責任
Ⅲ グロテスクな民主主義
──トクヴィルとフローベール──
第八章 トクヴィルの現代性
第九章 恋愛・金銭・デモクラシ
あとがき 私のフランス文学周航
著者紹介
西永良成
1944年生まれ. 東京大学フランス文学科卒業.現在, 東京外国語大学名誉教授. 著作に『評伝アルベール・カミュ』(1976), 『サルトルの晩年』(1988), 『ミラン・クンデラの思想』(1998), 『変貌するフランス──個人・社会・国家』(1998), 『「個人」の行方──ルネ・ジラールと現代社会』(2002), 『激情と神秘──ルネ・シャールの詩と思想』(2006)ほかがある. 訳書は, ポール・ヴェーヌ『詩におけるルネ・シャール』(1999), 『私たちの世界がキリスト教になったとき──コンスタンティヌスという男』(2010), ユゴー『レ・ミゼラブル』(2012- )のほか, サルトル, クンデラなど多数.