日本の知的障害福祉の問題点を、歴史的に検証する
角田慰子
知的障害福祉政策にみる矛盾
──「日本型グループホーム」構想の成立過程と脱施設化
2014年2月21日刊行 A5判・上製 230頁
本体価格3600円 ISBN978-4-906791-27-9 C1036
■ 日本の知的障害福祉は、欧米の福祉先進諸国に比して大きく立ち遅れてきた。その一つの現れが、施設に依存しない地域生活への支援=脱施設化への移行であった。その具体策であるところのグループホームは、なぜかくも遅れ、またそのための法整備がなされて以降も、施設は増え続けたのか。
■ 高度成長期からバブル期へ、日本の知的障害福祉政策は大きく揺れ動いた。入所施設拡充からグループホーム構想へ、すなわち施設入所を中心とする福祉制度から地域における生活支援に力点を置く体制への、基本方針としての移行である。この間の矛盾に満ちたプロセスを、文献資料と制度設計にかかわった行政担当者への聞き取りとを基礎に描き出す。
■ 知的障害者とその家族、そして介護の現場に立つ人びとにとって、より望ましい次への一歩は、どのようなものなのか。そして、それを支える政策と法とは、どうあるべきなのか。制度化の過程を多角的に再検討し、その歴史に、今後へと踏み出すべき方向を学ぶ。
目次
序 日本の脱施設化政策にみる特殊性
前 編 戦後知的障害福祉政策の展開──入所施設政策と中心に
第1章 知的障害者施設をめぐる戦前・戦後の問題──1960年代まで
第2章 入所施設拡充路線の確立と強化──1960年代から70年代半ば
第3章 コロニー政策の終焉と入所施設拡充路線の行き詰まり
第4章 厚生省障害政策と新課題としてのグループホーム構想の提言
後 編 「日本型グループホーム」構想の萌芽と制度化
第1章 施設主導による地域居住構想の登場──信楽青年寮の「民間下宿」の事例を通して
第2章 大都市における地域居住構想──東京都生活寮事業を中心に
第3章 北欧モデル導入の試み
第4章 厚生省官僚によるグループホーム構想
著者紹介
角田慰子(つのだ・やすこ)
1973年生まれ。専攻、社会福祉学。東京都立大学大学院博士課程社会科学研究科修了。現在、立教大学コミュニティ福祉学部助教。著書:『新・コミュニティ福祉学入門』(坂田周一監修、共著、有斐閣、2013年)ほか。