死後の世界のヴィジョンと輪廻転生の宇宙論──九鬼周造ルネサンスのために
伊藤邦武
九鬼周造と輪廻のメタフィジックス
2014年7月24日刊行 四六判・上製 270頁
本体価格3200円ISBN978-4-906791-32-3 C1010
■ 「永遠のなかにまたたく短い人生、……形而上学のない哲学は寂しい」──日本の近代思想史に類例のない軌跡を残した詩人哲学者、周造とは何者か。
■ 「いき」と「偶然性」と「時間」の哲学、その到達点を示す「形而上学的時間論」を精密に解読し、豊かな弾性をもつ詩的ヴィジョンと、誠実にして強靱な思索力との秘密に迫る、著者渾身の書き下ろし。
■ 東方は、古代インドの聖典『バガヴァッド・ギーター』と初期仏教の経典『ミリンダ王の問い』、西方は、ベルクソンとハイデガーの哲学──この両者が交差する地点に、回帰する宇宙と輪廻の形而上学が構想される。それは、生への限りない愛惜とともに、九鬼が追い求めた「死を問題とする形而上学」にほかならなかった。
目次
序章 九鬼周造の回帰的時間論
第1章 「輪廻する時間」という挑戦
第2章 生の哲学と二〇世紀の時間論
第3章 九鬼メタフィジックスの骨格
第4章 さまざまな輪廻説
第5章 回帰する宇宙という詩
第6章 ミリンダ王の問いと輪廻する意志
第7章 因果の法則と反復するイデア
第8章 解脱への途
著者紹介
伊藤邦武(いとう・くにたけ)
1949年生まれ. 専攻, 哲学. 京都大学大学院文学研究科教授を経て, 現在, 龍谷大学文学部教授. 著書, 『人間的な合理性の哲学──パスカルから現代まで』(1997), 『ケインズの哲学』(99), 『偶然の宇宙』(2002), 『パースの宇宙論』(06), 『ジェイムズの多元的宇宙論』(09), 『物語哲学の歴史』(12)ほか.