旅する作家がおりおりに拾った、魂の歌/声の花束
声 千年先に届くほどに
姜 信子
装画・装丁 溝上幾久子
6月23日刊行 四六判・並製・220頁
本体予価1800円 ISBN978-4-906791-46-0 C0095
いのちを燃やすための〈声〉は、いまどこに響いているのだろう。国境を越え、言葉の壁を越え、生死の境をも越えて、ほんとうのいのちの歌を探した漂泊の記録。さて、どうやって生きたものやら? 声に聴け、歌を拾え!
日常を埋め尽くしている電子音の海を離れて、耳を澄ましてみよう。そこには、戦災から立ち上がろうとする人びとの営みを包んだ、昭和の心の歌があり、人間の世界を呪う、ミナマタの野生の祈りがあり、底知れない生存の深みを伝える、ハンセン病詩人の声がある。いのちの輝きにあふれた南島のおばあや、異郷に生きる歌人たちと一緒に歌ってごらん、踊ってごらん。
死と沈黙の領土を超えて、千年先まで届く、声の祈りをいま……。
目次
プロローグ 声の旅人 旅する声
語りえぬ命の記憶のために 旅のはじまり
──ミナマタからハンセンへ── 生き抜く力
声が失われる 死者たちに
はるかな歌 名前を返せ
鬼の唄 歌の旅人
母を想えば 長い旅
私は顔の巡礼 エピローグ 声の祈り
著者紹介
姜 信子(きょう・のぶこ)
1961年横浜市生まれ。作家。恵泉女学園大学客員教授。85年、東京大学法学部卒業。86年に「ごく普通の在日韓国人」でノンフィクション朝日ジャーナル賞受賞。著書に、『ごく普通の在日韓国人』『かたつむりの歩き方』『わたしの越境レッスン』『うたのおくりもの』(いずれも朝日新聞社)、『日韓音楽ノート』『ノレ・ノスタルギーヤ』『ナミイ! 八重山のおばあの歌物語』『イリオモテ』(いずれも岩波書店)、『棄郷ノート』(作品社、熊本日日新聞文学賞受賞)、『安住しない私たちの文化 東アジア放浪』(晶文社)、『追放の高麗人』(石風社、地方出版文化功労賞受賞)などがある。