「風林火山」の真実。日本の兵法思想の礎となった書物の数奇な運命
『甲陽軍鑑』の悲劇
——闇に葬られた信玄の兵書
浅野裕一・浅野史拡
2016年7月22日刊行 四六判・上製256頁
本体定価2400円 ISBN978-4-906791-59-0 C0021
桶狭間の戦い、長篠合戦……闇に葬られた「敗者の魂の叫び」が、戦国合戦の異なった絵柄を浮かび上がらせる。
信玄の側近によって、滅亡の渦中に記録された『甲陽軍鑑』。日本の兵法思想の礎を築いたこの書は、明治期以来、戦後に至るまで偽書の汚名を着せられてきた。
『甲陽軍鑑』が語る戦闘の美学とは、武士のあるべき姿とはどんなものだったのか。そして、「歴史の真実」とは何か。
目次
第一部 『甲陽軍鑑』の兵学思想
──上方兵学との対比──
第一章 中国兵学と日本兵学
第二章 武田信玄の美学
第三章 織田信長への非難
第四章 悪しき上方の風土
第五章 豊臣秀吉の反論
第六章 徳川家康は希望の星
第七章 甲州流兵学からプロシア兵学へ
第二部 『甲陽軍鑑』偽書説をめぐる研究史
──偽書説はなぜ生まれたか──
第一章 偽書の烙印──『甲陽軍鑑』悲劇の開始
第二章 偽書説をめぐる戦前の研究──逸足のジレンマ
第三章 『甲陽軍鑑』の戦後──偽書説の守護者たち
第四章 不都合な史料──菅助に戸惑う研究者たち
第五章 名誉回復の兆し──もう一つの桶狭間
著者紹介
浅野祐一(あさの・ゆういち)
1946年, 仙台市生まれ. 東北大学名誉教授. 中国哲学専攻. 『黄老道の成立と展開』(創文社, 1992), 『孔子神話』(岩波書店, 97), 『孫子』(講談社学術文庫, 98), 『儒教 ルサンチマンの宗教』(平凡社新書, 99), 『古代中国の言語哲学』(岩波書店, 2003), 『戦国楚簡研究』(台湾・萬巻樓, 2004), 『諸子百家』(講談社学術文庫, 2004), 『古代中国の文明観──儒家・墨家・道家の論争』(岩波新書, 2005), 『図解雑学 諸子百家』(ナツメ社, 2007), 『古代中国の宇宙論』(岩波書店, 2008), 『上博楚簡與先秦思想』(台湾・萬巻樓, 2008)ほか.
浅野史拡(あさの・ふみひろ)