書下し・死を生きるヨーロッパ中世。煉獄とは何だったのか
煉獄と地獄――ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観
松田隆美
10月25日刊行 本体3200円
四六判・296頁 ISBN978-4-906791-74-3 C0014
煉獄と地獄の図絵、99点収録。聖職者・知識階級ではなく、中世ヨーロッパの一般大衆は死と死後の世界をどのようにイメージしていたのだろうか。
13〜16世紀、黒死病(ペスト)の惨劇をくぐった中世は、死後世界をめぐってさまざまな表象と物語を生み、やがては煉獄の誕生をみる。往生術、死後世界探訪譚、死の舞踏という死の文学のモチーフにおいて煉獄が果たした役割とは何だったのか。
説教、教化文学、壁画、ステンドグラス、時禱書、装飾写本などを図像とともに広く渉猟し、人々の心性に浸透してその死生観の根となった要素を掘り起こす。
目次
序章 ヨーロッパ中世の死生観を考えるためのいくつかの前提
第1章 死とむきあう──現世蔑視と現世無常
第2章 死を飼いならす──煉獄の役割と死後の保険
第3章 死と対面する──いまわの際のドラマ
第4章 死後を生きる──死後世界の探訪と表象
終章 死の変容──薄く引き延ばされた死
著者紹介
松田隆美(まつだ・たかみ)
1958年生まれ。専攻、ヨーロッパ中世文学。中世写本のテクストと挿絵との関係を中心に、一般大衆の心性に浸透した世界観・死生観を探求。慶應義塾大学文学研究科博士課程修了、ヨーク大学大学院博士課程修了。現在、慶應義塾大学文学部教授。著書:『ヴィジュアル・リーディング──西洋中世におけるテクストとパラテクスト』(2010)、編著:『貴重書の挿絵とパラテクスト』(2012)、『書物の来歴、読者の役割』(2013)、『世界を読み解く一冊の本』(2014)ほかがある。