清楚にして鮮烈な、愛と俠気の伝記
俠気の生態学
──牧野四子吉と文子の鮮やかな日々
船木拓生
4月26日刊行 ISBN978-4-910154-17-6 C0023 四六判・上製 336頁 本体2800円
生物画家の牧野四子吉とイタリア語翻訳者となった文子、この日本人夫妻の生は時代の心理を精神誌としてあぶり出す。
図案家として大杉栄、辻潤、竹久夢二、林芙美子らと交わった四子吉は、人妻だった文子と京都へ駆け落ち、そこで生態学と出会い、生物画を「天職」とした。
戦時下、二人の「愛の巣」は自身のテーマ(霊長類、核酸等)や生を追い求める男女が清新な議論を楽しむ稀有の気圏を形成した。
「被災」を危機的異常ではなく常態とする21世紀、
二人の処世とその生物画はヒトの自然態について静かに触発する。
目次
はじめに 博物誌風精神誌の試み
第一章 人妻が恋に走った六月
第二章 自我・自由・美
第三章 第三章 「愛の巣箱」のエコロジー
第四章 自己──戦争下の平常心
第五章 揺れる時間
第六章 跳躍は意思の力
終 章 めぐる野生
著者紹介
船木拓生(ふなき・たくお)
1947年生まれ。早稲田大学第二文学部露文科卒。1970年、“山本安英の会”事務局に入り、木下順二『夕鶴』『子午線の祀り』などの制作に携わる。“会”解散後、企画編集プロダクションを経てフリー。著書、『富士の気分──深沢七郎・三島由紀夫・武田泰淳による綺想(かぷりちょす)』(西田書店、2000年)、『評伝 観世榮夫』(平凡社、2007年)。